大規模修繕はどうして必要?
さて、なぜ大規模修繕工事を行う必要があるのかを再確認させて頂きます。
大規模修繕工事の最大の目的は建物の寿命を延ばすことにあります。強固な鉄筋コンクリートといえども、長期間メンテナンスを怠ると劣化がすすみ、建物の寿命を大きく縮めることとなり、修復するためには非常に大きな費用がかかります。
昨今マンションの永住志向が増加し、居住者の生活基盤であるとともに、地域における社会活動の持続や安全・安心な市街地の形成という観点からも住宅ストックとしてのマンションは非常に重要になっています。
マンションの快適な住環境を確保し、資産価値の維持、向上を図るためには適時適切な維持修繕を行うことが必要です。
国土交通省の統計によると12年±2年程度の周期で大規模修繕工事が実施されています。最近はこの12年±2年というスパンをいかに長く改善させる事ができるかが大きな課題となっております。
一方、各回に実施される内容については、通常は経年劣化や不具合の補修をする原状回復を目的とする修繕が1~2回目の大規模修繕工事では行われますが、3回目からは居住性の向上や建物のスペックを改良する改修が組合様の合意形成にもとづいて行われることが多くなります。
調査時に見られる
主な劣化症例
調査時に見られる代表的な劣化の症例をご紹介します。
外壁タイルの不具合
ひび割れ
目視確認可能です。
発生箇所や大きさ(巾、長さ)、形状により発生原因が様々である為、正確な原因究明と適正な処置・対応が必要となります。
浮き
基本的に目視では確認できないため、
打診棒でタイル表面を叩いて(転がして)その音で判断します。
浮いている箇所はカラカラと乾いた硬質の音に変わります。
その部分がどういう原因で浮いている(部分剥離している)かを正確に把握し、適正な処置・対応が不可欠です。
コンクリート躯体の不具合
ひび割れ
コンクリートのひび割れ発生のメカニズムは、乾燥収縮により発生するもの、地震による建物の揺れからくるひび割れ等さまざまです。
ひび割れの幅0.3mm未満(表層のひび割れ)と0.3mm以上のひび割れ(構造体への雨水浸入・漏水の危険性のあるひび割れ)とで補修方法が異なります。
鉄筋爆裂
水分と炭酸ガスよってコンクリートが強アルカリ性から中性に変わることにより鉄筋が腐食し、錆びることにより堆積が膨張し、コンクリートを押し上げ鉄筋に沿って発生したひび割れです。
経年による中性化の進行
エフロレッセンス
表面に発生する白い綿状の結晶物、あるいは斑点状の白華(はっか)ともいいます。
モルタルの中の水酸化カルシウムが躯体内に浸入した雨水などに溶けてひび割れなどから滲み出し、空気中の炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムとなったものです。
簡単にいうと雨水などが躯体に浸入し、不純物と一緒に外壁に出てきているということです。
防水の不具合
ウレタン塗膜防水の剥がれ
屋上やルーフバルコニーのパラペット(50cm程度の立上り部分)や庇の上面、バルコニーのアルミ手摺の下部分に塗布されている防水塗膜が剥がれている状態です。
紫外線の影響や雨水などにより経年劣化していきます。
また施工時の気象条件や下地の状態が仕上がりと耐久性に大きく影響します。
長尺塩ビシートの剥がれ
バルコニーや廊下等の床に貼られた塩化ビニル系床材シートが経年により剥がれた状態です。
塩ビシートと塗膜防水の一体化により防水機能が保たれている為、剥がれた状態を放置していると雨水等が躯体に浸入していく恐れがあります。
シーリング材の不具合
シーリング材とは構造物の防水性を保持するために、継ぎ目等に充填する材料です。
経年により材料が痩せてきたりひび割れてくるとそこから雨水が浸入し漏水等に繋がっていきます。
塗膜の不具合
塗膜の剥離、浮き・ふくれ
外壁などに塗られた塗料が脆弱していき剥がれたり、浮いてくると、美観を損なうだけでなく、雨漏りなどの原因となり躯体に悪影響を及ぼす可能性があります。脆弱部分を剥がして塗り替える必要があります。
塗膜のチョーキング
塗膜表面が紫外線などの影響で劣化し、チョークのように粉をふいた状態をいいます。